今回の作品で一番表現したかったことは「御大切」ということ。
人が生きていく中で、その深さはいろいろ有ったとしても、何をしても上手くいかない、自分の意志通りに動けない環境にはまり込んでしまう、あるいはかけがえのない大切な人を失うなどして、自分の存在価値を見いだせなくなる時があります。すごく孤独で話したくても話せない、誰にも理解してもらえなくて、生きていることが、或いは今此処にいることさえ、何の意味も感じなくなってしまうことがあります。そしてそれを、人は皆一生の間に何度となく味わうのだと思います。
わたくしもそんなどん底の思いをしている時、ふっとお釈迦様の「天上天下唯我独尊」という言葉が、天から舞い降りて来たような気がしたのです。
どんな人も、どんな時も、どんな場でも、私たち一人一人の存在が無条件にかけがえのない大切なものに感じたのでした。
どこからなのか、どこまでなのか、それはわかりませんが、限りなき関係性の中で個という存在がある。限りないご縁の中で「私が此処にいる、生かされている」と感じたのです。それは、本当に有り難く、同時に何ものにも揺らがない大きな喜びでした。
「御大切」とは、あらゆる命の本質的な在り方なのだと思います。
「願わくば、誰もがあまねき光の下で自らを輝かせてほしい」という祈りのようなつもりで制作致しました。
2004.12.12. いしだ ともこ